船からのレポート(1)横浜出航

第68回クルーズ出港式にて。地球一周の船旅が始まる高揚感に包まれる

ピースボートの最上デッキから大勢の人が手を振って声をあげる。最年長参加者、100歳の椿井節治さんがマイクを手に取り、横浜大さん橋客船ターミナルに集まった見送りの人たちに向けて出航の挨拶をした。椿井さんは、命をたたえることをテーマにしたこのピースボート第68回地球一周の船旅の象徴ともいえる存在だ。

クルーズディレクターの日高慎介いわく、第68回クルーズのテーマは「生きる」。参加者が「生きるということ」について考える機会にこの地球一周がなれば、という。

船旅に参加する490人の参加者は、船内で行われる企画や寄港地での交流などを通して直接世界の人と出会い、逆境の中でも幸せで元気に生きるために必要なものを目の当たりにしていく。490名のうち約200名は、以前にピースボートに参加したことのあるリピーターだ。

国連ミレニアム開発目標 (MDGs) の達成期限まであと5年。ピースボートはこの達成を求め、各寄港地にてアピールをしていく

南半球の17の寄港地をめぐるこの船旅では主に二つのことに焦点をあてる。すべての女性・男性・子どもの人権の保証と、10年前に定められ、極度の貧困と飢餓の撲滅などをうたった8つのゴール「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」を約束の2015年までに達成させるべく、人びとが行動を起こすことだ。

船旅のモンバサ(ケニア)からケープタウン(南アフリカ)区間では、アフリカ10カ国から12名の若者が乗船する。それぞれ自国の非政府組織(NGO)で働いている彼らは、洋上の「アフリカユースMDGsフォーラム」に参加し、貧困を終わらせるための提言書を作成する。この提言書はのちにそれぞれの出身国政府、そして日本政府に届けられる予定だ。


ルーズベルト・ゴンドゥエ大使(写真中央)、ピースボート共同代表吉岡達也、ピースボートスタッフ上野玲

クルーズ出航日の朝、港にて行われた記者会見では、アフリカユースの出身国である南アフリカ、ガーナ、マラウイの大使館代表者が発言し、ピースボートのプロジェクトへの応援とともに、10年前に国連で各国政府が約束したことがなんとしても守られなくてはならないことを強調した。

ルーズベルト・ゴンドゥエ駐日マラウイ共和国大使は、すべての人は一日三度の食事をとり、きれいな飲料水を飲み、子どもが5歳になるまで死ぬことなく、学校に通うことができるべきであると述べた。「私たち一人ひとりが豊かな環境に生きることができれば、みんなが強くなれるのです」。



MDGsダンスチームがソーラン節を取り入れた踊りをターミナルデッキにて披露

ピースボートスタッフ、金希泉がリーダーをつとめるダンスチームは、MDGsのメッセージをダンスを通じて表現していく。「ダンスは国境を越える言語」と述べる彼女は、ピースボート参加者からなるダンスチームが旅の先々で披露する「MDGsダンス」が、観客それぞれが自分なりの行動を起こすきっかけとなれば、という。



一瞬も無駄にはしないと早速友達をつくる椿井さん(写真左)

椿井さんとと同じようにピースボートにも長い歴史があり、その歴史は年を追うごとに深みを増していく。ピースボートは1983年の初航海以来、約180の寄港地を訪れ、世界の問題への関心や理解を深める出会いを作ってきた団体だ。「水先案内人」と呼ばれる専門家や世界各地に関係を作り上げてきた協力団体の助けを借りながら、持続可能な開発、環境保護、平和的紛争解決などについての見解を共有する中立的な場を提供しつづけてきた。


出航を祝うMDGsダンスチームの内田由美子さんと日高慎介

ピースボートの客船「SSオセアニック号」は103日間をかけて南半球を旅する中で、フィリピン、ナミビア、ペルー、フィジーなどを訪れる。これらの場所では、参加者たちがそれぞれの人生の忘れがたい体験をするだけでなく、ピースボートの歴史にもその経験が刻まれていくことになる。

この船旅のなかで扱うテーマは、性目的の児童売買や先住民文化の保護、南アフリカのアパルトヘイト終焉15周年など幅広い。だが、特に注目されるのは一生に一度、誰もが訪れたいと願う南極の遊覧だ。地球上でもっとも貴重な場所のひとつである南極およびサウスシェトランド諸島を三日間かけて遊覧し、気候変動の影響を目の当たりにするまたとない機会となるだろう。


横浜の風景は103日後も同じだが、参加者の考え方や心はまるで違ったものになっているだろう

1999年に行われたピースボート初の南半球をまわるクルーズに参加した日高氏は、この体験がいかに特別なことかを強調した。南極遊覧は、これから訪れるであろう数多くの胸躍る経験のひとつとして、一生忘れることのない旅の思い出となるに違いない。

(第68回クルーズウェブリポーター ニック・ローガン)

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